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日記代わり

なぜわたしは「水ダウ」ネルソンズの解散ドッキリにこんなにも夢中になってしまったのか

初めにことわっておくが、今回の記事は「水曜日のダウンタウン」という番組で2023年5月10日に放送された、

「トリオ芸人、1人抜けてポンコツと2人きりになったらそいつとはコンビ続けない説〜ネルソンズからエースの和田まんじゅうが抜けたら、青山はポンコツ岸と2人でコンビを続行するのか?〜」

という検証企画を見ていないと、なんのこっちゃさっぱりわからない内容となっている。

公式予告編よりスクショしました↑】(すでに Tverでの無料配信は終了しています。有料サイトのParaviでは見れます。ご興味あれば是非)

この記事を、どれぐらいのひとが読んでくれるのかはわからないが、上記の企画を見て、とにかくめちゃくちゃ心が揺さぶられてしまったので書き留めないわけにはいかなかった。

 

企画のおおまかなあらすじは、こうである。

ネルソンズ」は、和田まんじゅう(エース)、青山フォール勝ち(ネタ作り担当)、岸(ポンコツ担当…ということになっている)からなるお笑いトリオである。今回、「和田まんじゅうが抜けたら、青山はポンコツ岸と2人でコンビを続行するのか?」という検証を行うため、和田と岸が仕掛け人となり、青山に解散ドッキリをしかける。その内容は、「和田が精神的にキツくなり、トリオを脱退する(お笑いを辞める)と言い出す」というもの。事前に、青山の目の前で和田がやる気のない態度を見せる(もちろん演技)などの伏線を貼っておき、いざ、マネージャーも交えた緊急会議にて和田は「お笑いを辞める」と青山・岸(※仕掛け人)に切り出す。しかし青山が頑なにそれを受け入れず、「辞める」設定の和田が「なかなか辞めさせてもらえない=検証ができない」というトンデモ事態に。それでもなんとか和田の要求が通ると、いよいよメインの検証発動。和田・岸の事前の予想では「青山が岸とコンビを続行することはないだろう」と話していたが、蓋をあけてみると、青山は「岸が(二人で)いいなら全然やる。なんならもう岸と二人でどんなネタをやるか考えてる。それで形が見えたら、和田が戻ってきたときにブーストかかる」などと前向きな発言を連発。その様子を別室のモニターで見ていた和田・岸をはじめ、全視聴者(※たぶん)が感動したのであった。

なんの気なしに見た今回の企画だったが、不穏な空気が徐々に加速していく前半パートからもう一気に心を鷲掴みにされてしまった。これどうなっちゃうの?番組史上、最悪の展開になるのでは?そんなハラハラドキドキを経て、お笑いをなかなか辞めさせてもらえない和田さんの悪戦苦闘ぶりに爆笑し、結末では驚きと共に感動が押し寄せる…そんなジェットコースター並みのエンターテインメントを、たったの30分弱でこんなにも堪能させてもらったのは初めてかもしれない。しかも何がすごいって、これはドッキリというパッケージではあるが、ひとつのドキュメンタリーなのだ。だからこそ、台本のあるどんな映画やドラマよりもリアルだし、刺激的だし、面白い。奇跡。もはや奇跡。

そんなわけで、猛烈に感動してしまったわたしは、それ以来何度もこのドッキリ検証企画を自宅で繰り返し見ている。もう20回ぐらいは見てしまっているかもしれない。友人に話したらちょっと引かれてしまったのだが、自分でもなぜこんなにもこのドッキリに心惹かれるのかわからなかったので、今回文字に起こして整理してみることにした。

 

不穏な空気が漂う前フリからのどんでん返し、そして大オチという完璧すぎる流れを見せた「奇跡のドッキリ」

まずは、仕掛け人となる和田さん・岸さんのふたりに、スタッフが企画を説明する。するとおふたりは、こう言うのである。

岸さん「いやぁ…(青山さんは岸さんと)やらないんじゃないっすか(苦笑)」

和田さん「もともと、僕と青山がコンビで、うまくいかなくて、僕が岸を紹介してもらって岸が入る形だったんですけど、青山がその時『(岸さんを)入れたくない』って言ってて」

岸さん「(話し合いのために集まった中野のマックで、青山さんが)同じテーブルに座ってくんなかったんすよ、最初。そんときのしこりが、なんかありますよね」

スタッフ「現在の青山さんと岸さんとの関係は?」

岸さん「ちょい下には見てると思うんですけど」

スタッフ「(青山さんが岸さんとコンビを)どのくらいの確率で続けそうですかね?」

岸さん「8:2で、2が続ける方です」

和田さん「10:0だと思う。一言で終わりそうな気するよな。『あっやりません』って」

岸さん「で、『水曜日のダウンタウンです』って(ネタばらしのスタッフが)来た後も心配です」

和田さん「遺恨残りそうじゃないですか」

と、バッドエンドへのフラグが乱立。開始早々、波乱の予感しかしない見事なオープニングである。

こうして、青山さんへのドッキリが開始。仕掛け人の和田さん・岸さんや、協力者の芸人さんたちが、数日間かけて丁寧に、丁寧に、「仕事への熱意を失った、やる気ゼロの和田まんじゅう」の姿を青山さんに見せていく。最初はそんな和田さんのことを心配しているように見えた青山さんだが、次第に心配よりも怒りが上回っていく様子が描かれる(イライラした青山さんに何故かとばっちりで岸さんが怒られるというオマケ付き)。もうこの時点で「一体どうなってしまうんだ?!」と固唾を飲まずにはいられない神展開となっている。

このような、完璧すぎる前フリを経て、いよいよ和田さんの「引退宣言」の日を迎える。

「緊急会議」と称して青山さんを吉本本社に呼び出し、ネルソンズの三人とマネージャーとの四人で話し合うことに。そこで和田さんは「お笑いの仕事がつらくなったから辞めたい」と「引退宣言」をするのだが…

ここで青山さんが和田さんを引き止めるための正論をこれでもかと繰り広げ、和田さんは何も言い返せなくなるという、別の緊急事態が巻き起こる。和田さんが辞めた時点で検証が始まるのに、スタート地点になかなか辿り着けないのである。途中で和田さんは離席し、別室に待機しているスタッフにこう漏らす。

和田さん「ちょっと…辞めれないです」

ここでスタジオの出演者、大爆笑。多くの視聴者も声を出して笑ったことだろう。仕掛け人であるはずの和田さんが翻弄され、困っている姿はまさにお笑いの本質とでもいうべき、100点満点の姿だった。と同時に、ドッキリの方向性がブレ始め、いよいよどこへ着地していくのか、予想不可能になっていく。

とはいえなんとか(おそらく数時間もの話し合いを経て)和田さんの芸人引退は渋々青山さんに受け入れられ、ようやく「本筋」の検証がスタート。

マネージャーが「今後について、おひとりずつと話したい」と申し出て、青山さんとマネージャーは二人きりで話すことに。

和田さんと岸さんは、別室でその様子をモニタリングするのだが、なんと予想に反して青山さんは「岸さんとコンビを続行する」と即答!

前フリが完璧だったぶん、ここでの大どんでん返し感がえげつない。「えっ」と言葉を失うくらい驚いた和田さんと岸さんだったが(テレビの前の視聴者も「えっ!」って声出たと思う)、その直後、子供のように抱き合って喜ぶふたりの姿から溢れ出る多幸感。こんなクソデカハッピーエンド、誰が予想しただろうか?

そして、ネタばらし。青山さんに「すべては『説』検証のためのドッキリだった」ということをバラす和田さんと岸さんの嬉しそうな様子や、それを聞いたときの青山さんの心底ほっとしたような表情、もう、すべてが良い。すべてが完璧。ただ、ここで終わりじゃないのが、このドッキリの本当にすごいところ。

青山さん「(今までの、やる気のない和田さんの姿がドッキリのための演技だったとすれば)じゃあ、俺がネタ書いてる時にこいつらが横でトランプ始めたのも…?」

スタッフ「(今回のドッキリとは)別です。ウチは関係してないです」

青山さん「いやいや、あれドッキリじゃなかったら、マジで…」

岸さん「(慌てて)ドッキリ」

和田さん「ごめん、ドッキリドッキリ」

三人「(笑)」

〜画面にデカデカと「検証結果:ネルソンズ続行」の文字〜

い〜〜〜〜〜〜や、何このコントのオチみたいな終わり方!!!!!!!ス〜〜〜〜〜ゲェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!ここが一番すごいと思った。ネルソンズというコント師にとって、もはや生き方というか人生がコントなんだね、と思わざるを得ない。いやぁ〜、すごいものを見た。ホントに。

視聴後ツイッターで感想を検索したら、案の定、「面白かった」「感動した」「ネルソンズのファンになった」などのポジティブなもので溢れかえっていた。ものすごい反応だった。実際、この企画でわたしもネルソンズのことが大好きになったし、ファンはめちゃくちゃ増えたのではないだろうか。

上で述べたように、この企画は間違いなく「ドッキリ史上、最高傑作では?」と思ってしまうぐらいクオリティの高いものだった。ただ、それだけではわたしを始め、多くの視聴者の心を鷲掴みにする理由にはならない。たくさんの反響があった理由として、そして、いまだにわたしがこのドッキリに夢中になっている理由として、以下のようなものがあるように思う。

 

いい年をしたおじさんふたりの「かわいさ」

仕掛け人である和田さんと岸さんは共に30代後半である。「おじさん」と呼んでしまうのはやや早いのかもしれないが、かといって「若者」とも言いづらい世代である。おふたりともすでにお子さんもいらっしゃるし、いい年をしたふたり、と言っても差し支えないだろう。

そんなふたりが、終始仲が良さそうなのが、すごく微笑ましいのである。おふたりの外見もあいまって、まるで小学生がはしゃいでいるかのような面影がある。特に、青山さんが「コンビを継続する」と即答した際には、肩を抱き合って喜びを全身で表現するふたりの姿に、スタジオからも思わず「かわいい〜」の声が漏れていた。実際、めちゃくちゃかわいかった。癒される、とでも言うのだろうか。とにかく、子供のように大喜びするふたりの姿は何度見ても飽きないのである(わたしは)。

別に、おふたりをマスコット的に扱うつもりはなく、実際は年齢を重ねた上でのずるさや闇も抱えておられるのだとは思うが、少なくともこの企画の中では、キラキラと輝いて見える。おじさんになっても、夢中になれるものがあればキラキラできるんだい!!そんなふうに思わせてくれる。

 

「受け入れるけど、あきらめない」青山さん

「芸人を辞めたい」という和田さんを引き止めるために青山さんが繰り広げた正論のオンパレードは圧巻であった。これを見て、青山さんの真面目さや、人間としての真っ当さを実感しないひとはいないと思う。もちろん、トリオから急にコンビになったことで自身が経済的に困る側面や、お子さんが生まれたばかりの岸さんを案ずる気持ちもあったのだとは思うが、青山さんの人間性が真に本領を発揮するのは、最終的に和田さんの引退を受け入れたあとの発言である。

青山さん「(岸さんとふたりで)1年ぐらいやって、逆にそこで形見えて和田戻ってきたらもう、確実にブーストかかるからね」

つまり、和田さんの引退は受け入れたものの、和田さんのことをあきらめてはいないのである。上の言葉から透けて見えるのは、和田さんに対する信頼というよりは、「和田さんのような才能ある人間が芸能界から離れられる訳がない」という、「世界」に対しての信頼なのではないか、とわたしは思った。どうあがいても、結局はお笑いの世界のほうが和田さんを手放すことはできないんだ、という、確証にも似た思いが、今日まで青山さんを突き動かしてきたのかもしれない…とすら思ってしまう(勝手に)。しかも、こんな思いを持っていることを、和田さん本人に伝えることはきっとないのである、何故なら和田さんにとってプレッシャーになってしまうから。ここで視聴者(というか、わたし)の胸に湧き上がる熱い感情は、感動なんていう薄っぺらい言葉ではなく、なんていったらいいのだろうか、尊敬というか、「自分もここまで他人に絶大な信頼を寄せてみたい」という憧れ、とでも言ったらいいのだろうか。とにかく、このドッキリのなかで、もっとも印象に残るシーンであった。

青山さんからすれば、「正しさ」を土台とする好感度が上がりすぎることは、芸人としては不本意なのかもしれないし、そもそも何かしら欠落を抱えた人間じゃないと芸人になろうだなんて思わないはずなので、聖人のように扱うつもりはない。青山さんだってダメな部分がいっぱいあるんだろうと思う。ただ、コンプラ祭りの昨今において、青山さんのわかりやすい「善」の部分が多くの視聴者を刺激したのは間違いない。「善い人」認定されたほうが、今の時代においてはプラスのほうが多いだろうし、それでいいんじゃないでしょうか。

 

「バラバラのピースがひとつになった」感

ドッキリ開始時、和田さん・岸さん共に、青山さんが岸さんとコンビを継続する可能性は低いと予想していた。だが青山さんは「継続する」と即答。ネタばらしにてその理由を問われると、

青山さん「だって、別に岸とネタやってて最近楽しいし…」

岸さん「!!(膝から崩れ落ちる)そうなん?」

青山さん「何かスゴいリラックスできて」

岸さん「そうなんや…」

おそらく、このドッキリがなければ、岸さんは「青山さんに受け入れてもらえていない」と勘違いしたままだっただろう。まあ、そもそも「受け入れたくない」という気持ちがあったら14年もトリオを続けていないと思うのだが、青山さんの和田さんに対する信頼を知っている岸さんからすれば、「和田さんと活動したいから渋々自分の存在を受け入れているのかもしれない」という思いがあったのかもしれない。なんにせよ、トリオにおける(そして青山さんの中における)自分の評価を低く見積もっていたのは事実だろう。だからこそ、「最近岸とネタやってて楽しい」と言われて膝から崩れ落ちるほど衝撃をうけ、心底嬉しそうな岸さんに、まるで友達に言うかのごとく、「よかったねーーーーーー!!!!!!!」と言いたくなってしまうのである。スタジオの出演者も言っていたが、この企画を通して三人の絆(恥ずっ)がより強固になったのは間違いないだろうし、これはもう、今年のキングオブコントも俄然期待しちゃいますよね!!ってなもんである。

 

下手なドラマや映画よりも予測不能で面白い、芸人さんの「リアル」

わたしはドキュメンタリーが好きでよくみるほうなのだが、稀に「こんなことある????」ってぐらいの神展開をみせてくれるスーパーおもしろドキュメンタリーが存在し、それは心の奥にずっと残ったりする。今回は、ドッキリというお笑い番組の企画だったのにもかかわらず、ここまでネルソンズという三人の人間性や関係性が浮き彫りになり、それがストーリーを作り上げ、大きなうねりをもって視聴者を感動の海に引き摺り込んだことは、まさしく奇跡である。

正直なところ、イチお笑いファンとしては、ここ数十年でお笑い芸人が飛躍的に増えたことで、ネタ市場は飽和状態だと感じている。面白いネタは無限にあるし、面白い芸人さんも無限にいる。では、どこで抜きん出ればいいのかと問われると、もう人間性の部分になってくると思う。実際、人間性に何かしらの評価がつくことで売れる芸人さんが今は多いし、「THE SECOND」の盛り上がりからしても、ネタの「その先」、つまり、芸人さん自身のバックグラウンドやストーリーが、一層重要になってきていると思う。

そんな時代の流れと、ネルソンズのドッキリはバッチリ合っていた。キングオブコントでは優勝こそ逃したのかもしれないが、このタイミングでこんなに大きなチャンスをつかみ、それをものにしたネルソンズは「選ばれた」存在なのではないかと思うよ!!!

 

以上、ネルソンズのドッキリが自分を含めて多くのひとを魅了した理由について、気持ち悪いほどの熱量で述べさせていただいた。

ここまで書いておいてなんだが、わたしは熱しやすく冷めやすいので、そのうちこのドッキリの映像も一切見なくなると思う。それでも、きっと心の奥にずっと残るに違いないし、ネルソンズのことは、ずっと応援し続けると思う。

【追記】とりあえず7月に劇場で生で拝見する機会は確保したんで、今から楽しみ!